Noriaki Hayashi Art Works _Nota |
東京都現代美術館で榎倉康二展が21日まで開催されていた。
自分が東京芸術大学に入った当時、芸大で教授を務めていてそれなりにお世話になった。人付き合いが悪いということもあるが、これまでの人生で師匠といえるべき存在にはなかなか出くわさない。が、榎倉さんは唯一そう呼んでもいいかなと言える存在だった。 存在だったというのは、自分が芸大を卒業して二年くらい経ったら突然亡くなってしまったからである。入学当時、芸大の油絵科の教授陣の大半の作品と人物にさほど興味を持てない状況であったが、中には工藤哲巳、山川輝夫、榎倉康二とまともな教授も居た(ある意味まともではない)。しかし在学中、卒業後と、その三人はぱたぱたぱたと居なくなってしまった・・・。いずれも死因は酒!酒!酒! まあ実に芸術家らしい死に様ではあるが、なぜこうも死ぬべきではない人が亡くなって、居なくなったほうがいい人物がしぶとく生き残っているのか!? 自分は学部までしか芸大には行っていないが、大学院に進んでいたのであれば間違いなく榎倉康二の下についていただろう。どうやら榎倉さんもそう思っていてくれたらしいが、芸大があまり長く居るようなところではないと判断し、学部で卒業したのである。今から思えば、行っておけばよかったと思うことたびたびであるが・・・。 スペインから帰国して、このタイミングで榎倉康二展がやっているということも何かの遠だと思い、やや墓参りでもするかのような心持ちで展覧会を拝見した。 展覧会自体は、規模的にもちょうどよく彼の作品が総括的に眺められるような構成になっている。物質と肉体のギリギリの境界線、白いキャンバスにじわりと浸透してくる油のシミ、人物や日常が写っていない写真群、作品だけを見ているとはじめっから榎倉康二という芸術家なんかいなくて、作品だけずうっと昔から存在していたかのような不動な時間を感じさせられる。そしてこれ以上、彼の手によって製作されることのない作品たちは、やはりこの先それ以上でもそれ以下でもなく作品だけものとして存在していく・・・。 作品を見ていると芸大の構内で知っている「榎倉さん」の顔がちらほらするので、なんだあのオヤジこんなこともやっていたのかとか、若い頃は生っぽい絵も描いていたんだなとか、個人的な感情で作品を見ずにはいられなかったが、同時に、その生前の「榎倉さん」を知っているだけに、人が死んで作品が残ることだとか、人が一生のうちにできることだとかをも考えさせられたのである。
by nori884e
| 2005-03-23 17:54
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